臆病を笑わないで

マイクさん

〈全粥の上に練り味噌で“Love”〉

ですか。いいですね。うれしくなって周りの人に見せているマイクさんの姿目に浮かびます。
愛はそうやって人を救うんですね。愛されているということは、生きる力につながるんだと思いました。

マイクさんのALSは体の変化を雄弁に語る嫌なやつですね。ぼくのガンちゃんは、医者に知らされるまで何も語ってくれませんでしたし、知らされた後も少しも本性を現しません。ガンちゃんの本性をぼくがみた時、ぼくの命はガンちゃんに横取りされてしまうのです。本当に恐ろしいやつです。憎らしいやつです。でも、そんなガンちゃんに魅入られたぼくは、ちゃんと定期的にガンちゃんの出現を警戒して早期発見に努めているのです。

前立腺に現れたガンちゃんは、医師の説明では「ステージ2、未だ前立腺内に止まって、他臓器や骨への転移などはみられない」ということでした。この話をみんなに報告すると、

「よかったじゃないですか!」

と異口同音に喜んでくれます。中には「運が良かったですね」と言ってくれる人も。これは最初の大腸がんの時もそうでした。まあ、処置ができる間に見つかったんだから、よかったんだろうなと思いますが、本当に運が良かったらがんなどにはならないのになと苦笑いをしてしまいます。〈でも、俺、がんなんだよなあ……〉って。

前回の返信で〈ただただ恐れるだけではなく、不安を募らせるだけなく、意味を明らかにし、本質を見極め、その病と向き合って生きていく〉などと大層なことを言いましたが、本当はビクビクしているのです。ぼくはこんなことを繰り返して、そのうちに命果ててしまうのだろうなって。あと何度こんなことを繰り返すのかなと。でも臆病を笑わないでくださいね。なんせ、立派ながん患者なのですから。

さっきも親しい人にこんなことを書いて送りました。
〈人前では、ヘラヘラしてるけど大腸ガン、前立腺ガン、さて次は……と考えると怖いし、ずっと平常心でいられる自信はない。ちょっと後ろ向きになると心が折れそうになる。情けないけどね。でも、頑張るって約束してるし、頑張るよ。立ち向かうよ。力つきるまで〉
自分自身の生きたいと思う気持ちを、支えてくれる人の愛で補強して、前へ進む。進むしかない。そう思います。だからぼくは神頼みではなくて、人頼みしたいと思います。

〈全粥の上に練り味噌で“Love”〉

ぼくにもそんな日々がいつか訪れるのでしょうね。
臆病なぼくは、ビクビクしながらそれを楽しみにしたいと思います。