自分の人生を自分の目で

驚くほど大勢の参加者で開かれた「生前葬エンジョイ・デス」 マイクさんのつながりのひろさを実感した 2019年6月29日

マイクさん
あなたが旅立った9日に毎月手紙を書きますと言っておきながら、昨日はとうとうできなかったことまず謝っておきます。すみませんでした。でも、これでもけっこう忙しかったりするんですよ。その上、昨日まであなたが暮らしていた京都で仕事をしておりましたので、もうバタバタで。マイクさんと知り合ったことで、京都での人脈もひろがり、仕事もひろがりそうです。

しかし、どこに行っても「マイクさん知ってますよ」という人が多くて、びっくりしています。マイクさんの社会活動の幅の広さ、多様さに驚かされるばかりです。しかもそれを本格化させたのが定年退職後からだということにも驚いています。猛烈な行動力だったんだな。その頃にもし僕がマイクさんと出会っていたら、僕の人生もずいぶん変わっていたのではないかと思います。僕なんかのんびりしたものだなと、ちょっと自戒を込めてマイクさんのことを思っています。

マイクさん
空から見ていてご存知かもしれませんが、このところこの国はパッとしない状況が続いています。新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めることができず、政治も打つ手に説得力を欠き、諦めのみが先立っているような感じです。なのにどこか緊張感も緩んでくるというような……。マイクさんがこの現状を見たら、きっと噴飯ものだろうななどと思ってしまいます。きっとこんなふうに言うんだろうな、
〈新型コロナウイルスに社会全体が感染したんだよ。個人の行動自粛の問題じゃなくて、社会全体がデータと科学的知見に基づいて冷静に考え動かないと。今は誰もがジタバタ右往左往しているという感じだな〉
と。研究者として冷静な目と思考を持つマイクさんなら当然のことです。

マイクさん
そう、あれは研究者として冷静な目と緻密な思考だったのですね。マイクさんが〈自分はどんなふうにして死ぬのか〉を心底知りたがっていたことです。〈次第にALSが進行し、からだが衰え、最後はどうして死に至るのか〉を。正直言って、そんなこと知らなくてもいいのにと僕は思っていましたが、研究者としてのマイクさんにとっては大切なことだったんですね。〈だってそれを知ることなしに自分の人生を全うしたとは言えないじゃないか〉きっとそんなふうに言って笑うんでしょうね。

僕は研究者じゃないけど、冷静な目と、緻密な思考を身に付けたいと思っています。マイクさんのように人生を全うするために。自分の目で自分の人生を見届けるために。