マイクさん
何時も甘えったれのマイクで恥ずかしい限りです
Re:決して孤独にはさせない
人はいったいいくつくらいから甘えることをしなくなるのでしょう。ぼくは、甘えることは決して悪いことではないと思っています。これが依かかりぱなしになると具合悪いし、依かかられる側にとっては面倒臭い話になると思いますが、甘えること自体はそんなに悪いことではないと思っています。
大切なことは、おたがいを思いやるということでじゃないでしょうか。思いやりがあれば少々の甘えは、甘えられる側にとってもうれしいことだと思います。そういう思いやりの通いあう関係をちゃんとつくること、それが大切なんじゃないかな、と。
では思いやりの通いあう関係はどうしたらできるのか……。まず自分の思いを伝えようとするのではなく、相手の思いをちゃんと汲み取ろうとすることからはじめたらいいんじゃないかな。自分の思いだけを一方的に伝えようとすると、受ける側は受け取ってあげなければいけないと思えば思うほどしんどくなるんじゃないかな、って思います。だから同じくらい思いあって、同じくらい甘えあって、そのくらいがちょうどいいのじゃないかと。
もう一つよく使うのは疫病神です
Re:決して孤独にはさせない
だとすると、マイクさんが言う「疫病神」というのは、実はマイクさんの少し多い目の思いが、マイクさん自身に魔神となって取り憑いていると思えばいいんじゃないかな。ちょっと思いが強すぎたんですね。それが、自己嫌悪の種子になってやがて疫病神という魔神の姿をとり自分自身を苦しめている。そんな感じだと。
たとえば……。ぼくは以前マイクさんが話されていたことを思い出しました。それまでは親しくつきあっていた友人、知人が、ALSという診断がついた途端に自分を避けるようになったんじゃないか、楽しく参加していたサークルに顔を出しても邪魔者のような気がする。そんな話でした。
ぼくはその話を聞いて思いました。周囲の皆さんはとてもマイクさんに気をつかっておられるのだと。だって、不治の難病だと診断された人にどう声をかけていいか、わからないのが普通じゃないでしょうか。慰めたらいいのか、励ましたらいいのか、知らんぷりをしたらいいのか……。マイクさんはありのまま、普通に扱ってくれたらいいのにと思うかもしれませんが、そうは簡単に割り切れないと思います。それだけこのALSという病気について、皆さんが深刻に受け止めておられるという証だと思います。マイクさんからそうなんだと歩み寄るだけで、状況は一変するのではないかなと思います。
それはご家族にとっても同じだと思います。ぼくは数少ない機会ですがご家族の話を聞き、これからの介護に備える構えや、心算の中に、マイクさんを疫病神のように思う気持ちなんて微塵もないと思います。家族愛ですよ。愛です。
長年暮らしをともにしてきて、いろんな感情をそれぞれに持っているわけです。ある日突然それまでの感情を水に流して、さあ新しい日々をというのは不可能じゃないかな。それまでの感情を引きずりながらも、どうするのが一番いいのかを考えるはずだと思います。
ぼくだって、大嫌いな父でしたが、それでも自分の父としてどうするのが、どう接するのがいいのか、必死で考えていた記憶があります。
マイクさんは決して厄介者でも、疫病神でもありません。それはぼくだけじゃなく、ケアマネさんやリハビリのPTさんなどから見ても同じだと思います。マイクさん、マイクさんがご家族を愛しているのと同じ愛で、ご家族はマイクさんのことを考えていると思います。その表し方は人それぞれです。でも愛を信じましょうよ。それで疫病神は消えるはずです。
まして ALSの最期や尊厳死の辛さなど 医師は語ってくれるのでしょうか
リハと点滴より生き地獄を見ておきたい
これから飛行機に乗る、としましょう。いつ墜落するか不安で不安で仕方ないと。で、CAさんに聞いたとしましょう。
「この飛行機は堕ちませんか? 堕ちるとしたらどんな時ですか? 堕ちるとしたら、どんな兆候がありますか? 堕ちたらどうなりますか?」
と。さてCAさんはちゃんと納得のいく返答をしてくれるでしょうか? ぼくはそんな話にちゃんとした返答は望めないと思います。
「これから離陸しようという時に、そんなことをお聞きになりたいですか? それなら目的地にちゃんと着くことを願いましょう」
くらいの返答があるのが関の山じゃないでしょうか。
ぼくは思います。
不安に打ち克つのはとても難しいことだと。そして不安に立ち向かうには希望が欠かせないと。
だからぼくは希望を捨てたくないと思います。今この時も、ぼくのがんという病気と、マイクさんのALSという病気と、そのほかたくさんの難病と言われる病と、全力で向き合っている研究者がたくさんいるはずです。そういう人たちの努力の中にも希望はあるはずです。
マイクさんがはじめられたラジカットの治験も、効果は4人に1人だと言われていますが、なぜ効く人と効かない人がいるのかを徹底的に研究することで、その効果は劇的に改善されるはずです。そこに患者個人の希望はもちろんですが、ALSという病気に立ち向かうすべての人々の希望があると思います。
そうして家族の愛の中にも希望は隠れているはずなのです。
ぼくはマイクさんと一緒にその希望を見つけたいと思っています。
マイクさん
愛を信じましょう。
希望を信じましょう。