決して孤独にはさせない

マイクさん

ぼくは何よりも、マイクさんがこの場にたくさんの思いを書き込んでくれていることを、とてもうれしく思います。突然ご自宅にまで押しかけて、いろんなお話をさせていただき、マイクさんを決して孤独にはさせないし、そのためにも外の世界とのパイプにぼくを使ってくださいなどと、大層なことを話した自分を、何を偉そうなこと言ったんだろと少々自嘲もしていました。でもマイクさんがこの場を使って繰り返すたくさんの発言・発信を目の当たりにして、ああこれをはじめてよかったと率直に思っています。だって、明日にでも死んでしまいたいなどと思わせるようなことを言っていたマイクさんが、こんなにパワフルだなんて。ちょっと驚いてしまいました。

このブログ、はじまったばかりですが、予想をはるかに上回る大勢の人が見てくれています。それだけでもマイクさんは孤独ではないと言えます。注目すら集めていると言っても過言ではないかと。

マイクさんが繰り返し使われる言葉に「生き地獄」があります。思うに、症状が進行した後の閉じ込め症候群や、このALSという病がどんなプロセスをたどって、つまりどんな苦しみを味わいながら亡くなっていくのかがはっきりしない不安を抱えた毎日がこれに当たるのだろうと。それはぼくだって同じです。自分がどんなプロセスをたどって死んでいくのか。それを考えると不安でたまりません。それを解消するのは、病を確実に治すということが第一だと思います。でもそれが今の時点で不可能だったらどうか……、そう考えた時そこに残るのは周囲の人の支えではないかなとも思います。そのためにはまず、自分が抱える病の事実やそれに対するご自身の思いを伝え、理解と共有を求めていくということが大切ではないでしょうか。

きっとマイクさんは言われると思います。

「理解と共有を求めるためにも、このALSという病気の事実を正確に知らなければならない」

と。その通りだと思います。だけどぼくは、たとえALSという病気の事実が正確にわからなくとも、マイクさんの場合ご自身でもおっしゃっているように、周囲の人やご家族からすると少々ネガティブな発言が目立つのではないかと気にしています。前回の書き込みで明らかにしたように、ぼくは決して安楽死を否定する立場にはありません。マイクさんだって無条件に死にたいと思っているのじゃないということは知っています。だったらもう少しだけ、周囲の人々やご家族の想いに、マイクさんから寄り添ってみられたらどうでしょう。

マイクさんはご自宅に自分の居場所がないと、だから入院を望むのだと言っておられます。だけどぼくが聞いている話では、自宅で療養生活を送ることは可能だし、ご家族はそのように環境を整えつつあると聞いています。ただ前にも書きましたが、大切なことは現実の暮らしを維持しつつ療養生活と必要な介護を維持するということです。ここでもマイクさんから歩み寄る、寄り添うということが大切になるような気がします。
確かに、マイクさんのご家族の愛情表現は少々独特のものがあるかな、とも思います(ご家族の皆さん失礼、ごめんなさい)。でも心配し、できる限りのことをしようとしておられることに疑いを挟む余地はありません。
「生き地獄」を回避するために安楽死をという想いに100%理解を示した上で言います。ネガティブな発言をする前にひとつ深呼吸をして、周囲の人々やご家族に少しだけ歩み寄り、思いをあわせてみてください。それでやはり孤独かどうかを考えてみてください。

それからもうひとつ。ALSの原因究明や治療法確率に向けて医療の現場で大きな努力が払われている一方で、リハビリテーション工学という分野では最新テクノロジーを駆使した閉じ込め症候群の解消に向けた研究が続けられていることにも触れておきたいと思います。先だって私の知人である研究者から、閉じ込め症候群に近い症状のALS患者さんに単語発信を可能にするシステムの実験に成功したとの知らせがありました。詳しくは、日本ALS協会のホームページに掲載されています。以下からどうぞ。

http://alsjapan.org/2019/03/26/post-2211/

このように、患者さん個人の周辺だけではなく、大勢の人が決して孤独にしない、させない取り組みを前へ進めています。どれだけ時間がかかるかはわかりません。マイクさんの症状進行にそれらが間に合うかどうかもわかりません。でも希望はあるということです。それだけはどうぞ忘れないでくださいね。

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