僕の自転車スローライフ

自転車で颯爽と町を行くマイクさん/撮影・金久まひるさん

マイクさん

10月は往復書簡とばしてしまいました。なにせ10月2日から11月28日まで、京都市内で連続4カ所、写真展をやることになって(実際今その最中なのですが)、とんでもなく忙しい日々を過ごしていたのです。気がつけば11月、そんな感じでした。
新型コロナウイルスの感染拡大で自由に動くことができず、お酒を飲みに出かけることはもちろんですが、仕事すらまともにできない状況でした。ですからほぼ1年半ぶりに動けるぞ!という状況に変わって、ついつい舞い上がってしまったという感じです。

会期中なるべく京都にいて、それぞれの会場に詰めようということで、長く京都にいてあちこち駆けずり回っています。交通費もバカにならないので売れない作家、写真家としてはちょっと困ったなと思っていたのですが、マイクさんが生前自転車であちこち走り回っていたことを思い出したのです。そうだ!自転車だ! しかも中古なら1万円弱で買えるぞ! ということで、まちの自転車屋さんで程度のいい中古車をゲットしました。

自転車に乗って帰る道、いつもはバスやタクシーの中から眺めている光景が随分違って見えました。まちってけっこうゆっくり動いてるんですね。車のスピードに身を委ねていたときは、なんだか気忙しく動かされていたんだなあと。しかも自転車のスピードは自分でつくり出したものですから、これが自分のペースなんだなと、なんだかホッとしました。そうしてマイクさんもこんな風景を、そんなことを思いながら走っていたのかもしれないなと、少し近づけたようでうれしくなりました。いいぞ!自転車!って。

ところがです。悲しい事実に直面しました。マイクさんは僕が大腸がんの後前立腺がんを患ったことをご存知でしたよね。大腸の縫合部と前立腺が癒着していて外科的な処置ができなかったことも。結局は放射線治療でうまくいったのですが、厳然として前立腺は存在しているわけです。ただでさえ排尿に様々な障害を抱えていることも事実です。頻尿だったり、間に合わなかったり……。で、自転車のサドルって、前立腺にもろ悪いんですね。

乗りはじめて数日後、軽快に自転車を漕いでいたら、両足に温かいものがつたい下りてきました。なんの感覚もなく失禁してしまったのです。慌てて主治医に電話で聞いてみたところ、サドルがいけないねという答えでした。「自転車はオススメできませんね」と。僕の自転車スローライフは数日で終わってしまったのです。で、1万円ほど損した!と落ち込んでいて、あっ、と思い出しました。

マイクさんがサドルの前後を逆さまにして乗っていたことを。これなら前立腺に与える影響は小さいのだと。これだ!僕は思いました。試しにサドルを逆さまにして乗ってみました。するとこれが腰掛けて乗っているようで按配がいいのです。しかもいろいろ調べてみると、前立腺を保護する用のサドルもあったりして、僕の自転車スローライフも安心して続けられそうです。

マイクさん
今更ながら思いました。マイクさんの研究者としての姿勢は、日常のあらゆる部分に目を向けるというところからはじまっていたのですね。そしてそれを自分で実践することで一つひとつ検証していくという。
僕は自分のテーマとして〈現実的に生きている人間の暮らしの事実に迫る〉ということを大切にしています。そんな僕にとってマイクさんの思い出の一つひとつが教えになっていると実感しています。

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