第2のスタート

マイクさん

あなたが旅立ってから10日が経とうとしています。あっという間でした。最後の17日間、僕は約束したとおりずっとあなたのそばにいました。何を話すでもなく、ただあなたの顔を眺めながら時間を過ごしました。なのに、どうしても鹿児島に戻らなければならず心を京都に、あなたのそばに残したまま病室を後にしたのです。

「一旦帰ります」

僕がそう言うと、あなたはカッと目を見開き応えてくれました。
「必ず戻りますから、それまで頑張ってください」
僕はそう言いかけましたが、その言葉をそのまま喉の奥に押し込んでしまいました。もうマイクさんは十分すぎるほど頑張ってきたじゃないか、これ以上頑張れって残酷じゃないか!? しかも僕のためにって……。そう思ったのです。

二度と会えなくていい、おたがいの思いはもう十分伝わっている。そう思って鹿児島に戻りました。その3日後、8月9日午後4時5分、
「今逝きました」
というひと言がご家族から届けられました。
翌日とるものもとりあえず京都に、あなたのそばに向かいました。

あなたはすでに病院を出て葬儀場におられました。
お顔を見たとき、僕はハッとしました。とても穏やかで、笑顔さえ……。ずっと病室で見ていたときの表情とはずいぶん違いました。最後の日々は本当に苦しく辛かったんですね。その苦痛から解放されて、本当に楽になったんだ。そう思いました。僕はその苦しみのわずかでもわかっていたのだろうか。共有できていたのだろうかと。

出会ってから1年半。この往復書簡をはじめて1年4カ月。僕はあなたを支えることはできたでしょうか。あなたに寄り添うことはできたでしょうか。なんだか僕の独りよがりだったような気がしています。

なのにあなたは、身を以て僕にいろんなことを教えてくれました。本当にたくさんのことを、心の中に残してくれました。これから僕はあなたが残してくれたものの意味を考えていこうと思います。そうしてあなたが最後まで社会に訴えたかったことを発信していきたいと考えています。

8月11日午後、僕はご家族の許しを得てあなたの骨を拾いました。マラソンやトライアスロンで鍛えた脛の骨でした。ずっしりとした重さを僕は決して忘れないでしょう。それをマイクさんの思いを受け継ぐ重さだと思っています。

マイクさん

この往復書簡、今日が第2のスタートです。繰り返しになりますが、僕はあなたが残してくれたものの意味を考え、そうしてあなたが最後まで社会に訴えたかったことを、この場から発信していきたいと考えています。

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“第2のスタート” への1件の返信

  1. 清水さま

    マイクさまのブログの最後は、6月24日という事でしょうか?
    そして最後の日は、8月9日という事をこのブログで知り、私の気持もおかげさまで一区切り出来ました。
    一つの小説を読み終えた以上の余韻を感じています。
    なにしろ最後まで、筋の通った文章が書けたその気力に感服しました。
    「人間の死に方の可能性を見た」と思いました。
    このことには清水さまの存在が大きかったと思います。
    この後にさらにまとめが有りましたら、是非聞きたいものです。

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