マイクさん
またまた怒涛の連投ですね。僕は素直に感心してしまいます。すごいパワーだなと。いや、ほんとにすごいですよ。マイクさんは、落ち込んだり、後ろ向きになったり、嘆いたりしながら、それでも実はすごいパワーの持ち主なんだと思います。そのエネルギーを僕にも少しでいいから、分けて欲しいな。
〈次女の作ってくれた文字盤があれば、指の力が少しでもある限りなんとか意思表示できると決め込んで気切を覚悟しました〉
アナログな文字盤のことですね。ですよね、少しでも手が動いたり、指が動く限りは意思表示というか、コミュニケーションできますね。というか、ほんの少し指が動くだけでも、タブレットやパソコンのキーボードで入力する方法はあるだろうし。意思表示はできると思います。ちなみに元衆議院議員の徳田虎男さんはALS患者ですが、ずいぶん前にMBCの藤原さんがインタビューをしていましたが、身体はほとんど動かないのですが、透明の文字盤を目で追い介助者に読み取らせて意思表示をするという方法をとっていました。介助者の慣れもあるのでしょうが、かなりのスピードで会話が成立する光景に驚いたことを覚えています。何が言いたいかというと、コミュニケーションの方法はあるということです。
でもマイクさんはせっかちみたいだから、時間がかかったり、相手がなかなか読み取れなかったりということに、すでに耐えられないのですよね。それはわかります。でもね、コミュニケーションっておたがいの歩み寄りじゃないかなとも思うのです。たとえば看護師さんなら、マイクさんがいうように忙しいですから、「何が言いたいの?」「さっさと言って!」みたいなのが、きっとイライラになったり、煩わしくなったりというのが顔に出るんでしょうね。そうなるとマイクさんもシラケちゃって、もういいやってなっちゃう。
家族はもちろん長く一緒に生活してきたわけですから、単語ひとつ、いや、「あ〜」という一声だけでも何が言いたいのかわかってくれるかもしれません。でも、昨日今日知り合ったような関係の浅い看護師さんたちですから、いくら仕事とはいえなかなか理解できなくても仕方ないかなとも思います。やはり、諦めずに歩み寄ることでしか解決できないのでしょうね。1回で通じなかったら2回、3回とチャレンジすることです。期待を込めて1回言えば通じるはずだと思っても、この間に無理なことだと十分すぎるくらいわかったはずです。だったらしつこいくらい粘りましょうか、繰り返しましょうか。そうやって時間をかけることで、歩み寄れるんじゃないかな。甘いかな。
〈何しろメッキリADLが落ちて、ベッドから起きて上肢部にタブレットを置くのも中々できない〉
〈この先のADL低下で生きる意味はと考えると絶望的で〉
でね、この怒涛の連投を見ていて、読んでいて思うのです。これだけ長い文章を書くことができて、自身の落ち込んだり、後ろ向きになったり、嘆いたりを、思い切り吐露できてるんじゃないかと。言いたいこと言えてるじゃないですか。ADLは誰だって年を重ねれば、老いれば低下していきますよ。それは仕方のないことですよね。衰えるスピードは人それぞれですが、衰えるのは誰しも同じ。僕だってそうです。ADLが落ちていくのはマイクさんだけではありません。みんなそうなんです。でもマイクさんはALSがあるから、人より随分早いというのは事実ですね。
でも79歳で、タブレットを使いこなして、こんなに長い文章を書き続けている。文章を書くということを考えると、ADLは落ちても文章を書くことで得られる到達感や達成感、砕いて言うと「言ってやった感」というのはとても大きいんじゃないでしょうか。入力がしんどくて辛いとしても……。それってQOLに繋がるんじゃないでしょうか。
〈これでは知人友人までに生き様を見て欲しいとは思えない予感がします〉
風景としての、姿としての生き様と、この文章ににじみ出る生き様は、随分と違うもの、かけ離れたものなんでしょうか。僕は、マイクさんはすでにこの「往復書簡」で十分すぎるほど生き様をさらけ出していると思います。何を今更と言えば少々言葉が強いかもしれませんが、そう思います。みなさん、もう、見ちゃってる。
そこいらの79歳のおじさんを見て、ここまでハイテク、IT駆使して言いたいこと言ってるおじさんは、そうざらにはいませんよ。だから、マイクさんのQOL、生活の質は高いと思います。
〈何しろどんなにもがいても死ねないのです。何時までもがき苦しまないといけないのでしょうか〉
これって、みんなそうじゃないでしょうか。どんなにもがいても死ねないのですよ。多分死ぬまで、死ねる時までもがき苦しまないといけないのでしょうねえ。それが「生きる」ということだと、父の死に様を見ていて思いました。僕はとことんもがこうと思います。親父にできたんだから、僕にできないはずはない。そう思います。