生き様を見せて欲しい


マイクさん

〈いよいよ明日の気管切開で、ここ2〜3ヶ月の肺炎防止のため胃瘻から以外 唾も飲み込めない口腔の鬱陶しさから、多分少しは解放されるでしょう〉

いよいよ明日ですね。手術自体は15分程だと聞きました。大変でしょうが、看護師さんの「心配ありませんよ」という言葉を信じて頑張ってください。僕の知人、友人にも何人か気管切開をした人がいます。彼ら彼女たちは一様に手術自体はどうってことなかったと言います。

身体にメスを入れるわけですから、不安はないと言えばそんなはずもないと思いますが、大丈夫ですよ。僕なんてお腹に6カ所も穴を開けて、お臍の下を15センチ切り開いて、40センチほど大腸を切り取りましたが、全然へっちゃらでしたよ(笑) それに聞くところによるとマイクさんの執刀医は「神の手」を持っているというじゃありませんか大船に乗った気分で臨みましょう。って、胃瘻造設で経験済みでしたね、すみません。

〈不治の病なのに手術の改善がどの程度あるのか、その価値があるのか、やってみないと分からなくとも、手術の費用など心配する事もなく、やるのです〉

さあ、そこですね。どの程度改善するのか、価値があるのか……。マイクさんの苦悩の根底には、そのことが大きく横たわっているようですね。それは不治の難病であるALSに、医療費を投じて、手間暇をかけて治療する意味も価値もないと。でも僕は、意味とか価値とかをどうのこうの言う前に、少しでも楽になることは何でもやったらいいと思います。

そう言うと、サッと早く死ぬのがいちばん楽だって言われそうですが。でもマイクさん、マイクさんに限らず僕だって誰だって最後は間違いなく死ぬわけですよ。だったら死ねるその時まで、少しでも楽して生きましょうよ。無駄だ、意味がないなんて言い出したら、死ねるまでの時間自体が無駄で意味がないってことになるじゃないですか。

前々から言い続けてることですが、マイクさんは生き様を見せるだけで、残された時間を生きる意味があると僕は思います。それにだいたい、無駄なんていうことはこの世の中にはないと思っています。すべてのことにはなにがしかの意味が必ずあるはずです。意味を問いだすと、それは程度の問題に帰結しそうな気がします。

たしかに、ノーベル賞をとるような研究者の仕事には意味も価値もあるでしょう。でも無名の研究者の仕事はどうでしょう。人間国宝になった工芸作家の仕事には意味も価値もあるでしょう。でも、僕の父のような無名の職人の仕事はどうでしょう。100万部、200万部という本を売る作家の仕事に比して、1000部、2000部を売り切るのにひいひい言っている僕の仕事は意味も価値もないのでしょうか……。

それぞれの状況、環境、事情の中で、それぞれが生きている。そこに意味があるのではないでしょうか。価値があるのではないでしょうか。ええ、僕は誰の人生にも、どんな人生にも、良くも悪くも意味があり価値があると思っています。だから僕はマイクさんにも、最後まで生きる意味、死ぬ意味を、生き様を見せて欲しいと思っています。

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