
マイクさん
この往復書簡への時間も割けなくなってって……。ぼくにはちょうどいいタイミングになってきました(笑)充実の退院生活ですね。精力的に動き回るマイクさんの姿を思い浮かべて、ぼくも頑張ろうと思いました。ぼくはまだ治療の方針も立たず、宙ぶらりんのままというか、取り残されたままというか、はっきりしない時間を過ごしています。いまはただ、来週の写真展に向けてあれやこれやと準備に追われ、がんのことなど考えているヒマもないというのが、実際のところです。
ご夫婦での里帰りとご兄妹との再会、お墓まいり……。楽しい時間を過ごされたことが手に取るようにわかります。奥様と水入らずの道中、特に在宅療養のことについてどのような会話があったのか、とても気になるところです。ただ今回のポストを読む限り、マイクさんがご家族との時間を切望されていることが、ぼくにはよくわかります。マイクさんのことだから、どうしたら思いを遂げられるかいろいろと考えて、いろいろと試行されていることでしょうね。しかもこれからの時間を、社会との関わりを持ち続けるという視点で考えておられること、とても力強く感じました。
難病連を訪れて患者会の結成を探ったり、マヤさんのワークショップの広報をしたり、不動産屋を訪ねて「マイクの家」(ぼくの居場所も考えてもらったりして)の実現の可探ったり、そういう動きの積み重ねが、あの6月29日の「えんじょい・デス」のものすごい人の数に繋がってるんだなと思うと、これまでマイクさんが深く社会と関わってきた風景が鮮やかに浮かび上がりました。そんなマイクさんに「最後まで社会との関わりを諦めないで」などと……。まるで釈迦に説法でした。お恥ずかしい。
利己か利他か……。
ぼくは他者との比較で自分の在り方、立ち位置や境遇、さらには恵まれているかどうかなどを探ったり、確認したりというやり方を好みません。ぼくは徹底的に自分自身に集中したいと思っています。自分に徹するということです。ぼく自身がやりたいように、徹底的にやる。そのぼくが自分のことだけを考えているようなら、それはとんでもなく利己的な結果を招くでしょうが、そのぼくが社会との関わりの中で生きることをやめない限り、他を利することに繋がると思っています。そこではじめて利己・利他という二項対立を止揚できるのではないかと。そういう生き方をしたいと思っています。
こんな小理屈を書きながらも、「マイクと哲男の家」のことを思い浮かべて、ついニヤッとしてしまいます。マイクさんとひとつ屋根の下で議論したり、冗談を言いあったり、いろんな行動を起こしていく。なんだか楽しそうな感じです。
当たり前のことですが、楽しいことを考えることで、元気が湧いてきます。ぼくがそばにいたら、マイクさんがもし胃ろうになっても、お酒を入れてあげようと思います。ぼくがそうなったら、お酒を入れてくださいね。そんな不良な療養生活も面白いかも。お酒には申し訳ないですが(笑)